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第17話  疋田さんは、母には敵わない。

Author: satomi
last update Last Updated: 2025-10-13 07:40:27

「何で袴なのよ?」

「うちの伝統みたいなもんだ。ほれ紋付袴ってやつ」

――あー、あるある

「着物っていいよな。脱がしやすくって…」

「はぁ?まだ昼なんだけど?すでにそんなこと考えてんの?」

「それはもう、正式に婚約発表するって決まった時からずーっと。で、今日着物なんだもん、思いたくなるよな誘ってるのかって」

「思わないでよ。私は洋服に着替える‼」

「ヒカルさんの母親、脱がしやすいのわかった上でヒカルさんに着物着せたんじゃねーの?」

――あり得る。車いすで振袖って動きにくいもんね

「そして、その袴は脱ぎやすいってワケ?」

「そういうこと!ここはホテルだ。さて、3連休スイートルームでもいきますか?お嬢さん?」

「私は部屋とってない」

「なんと、俺が部屋をとってまーす。ほら、鍵あるだろ?」

――用意周到…

「というわけで、いざスイートルームへ」

 流された、負けた、この人は私を凹ます。

「気分悪いのか?」

「亨さんの思うがままに操られているようで、自分が情けなく凹んでるだけです…」

「うーん。事実だからなぁ。情けなく思うことはないんじゃないか?それだけでちょっとは救われるだろ?」

――腹をくくるしかないのか…仕方ないなぁ

「この着物、気に入ってるんだけど。汚したくない。どうしたらいい?」

「脱ぐ?そしたら、俺が畳むよ。ふふふ、でも君はもう振袖じゃないだろ?留袖だよ」

――凹むわー

「脱ぐわ。きちんと畳んでくれる?」

「喜んで」

「ちょっと帯が解きにくいのよ。首貸してくれる?」

 と、ヒカルは亨の首に手を回した。

「はぁ。そういうのが、無防備って言うんだよ?今は何もしないけど」

「えー?着物って下着付けないんじゃないの?」

「いつの時代よ?そういう自分はノーパンなの?」

「…う…」

 ヒカルはとりあえず下着姿になった。

「で?どうするの?」

「さっきみたいに首に手を回してくれたら嬉しいな」

「そう?」

 言う通りにした。

「ところで、ヒカルさんはハジメテじゃない?」

「悪い?私はうちの跡取りとして育てられてるのよ!」

 ヒカルの語気が上がる。

「ふーん。それじゃ、俺が初めての男になるんだね。そして他の男はヒカルさんを抱くことはない」

 亨が嬉しそうに微笑む。

――何も楽しくない‼

「袴、すぐ脱げるんでしょ?」

「もちろん。袴慣れしたるってのもあるけど、構造的にもね」

 亨
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